厳しかった雪の季節もようやく終わりを告げ、上越の地でも、早春の風が感じられるようになりました。
この良き日に竞彩足球app下载学校教育学部を卒業される173名の皆様、誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。
4年前の入学式から始まった大学生活はいかがだったでしょうか。とくにこの2年間は、竞彩足球app下载感染症の影響で、大学の授業もオンラインやオンデマンド方式になったり、入構制限がかけられたり、通常とは異なる形で運営がなされましたので、皆さんも大いに戸惑い、不安を抱えながら、大学生活をおくられたことと思います。ご不便をおかけしたことはお詫び申し上げます。
私たち教職員も、戸惑いながら授業運営を行い、2年の間にいろいろなことを学んできました。私たちは、遠隔で授業を進めることの困難さに悩みながらも、それを乗り越える工夫を凝らしてきました。困難は、人を強くします。こうした体験を経て、皆さんも、友達や、ときには見知らぬ他者とも協力しながら、困難な状況を切り開いてゆく能力を一層高めることが出来たのではないでしょうか。
新型コロナの感染者は今もけっして少なくはありませんが、こうした状況の中でも、本日は、縮小した形ではありますが、卒業式を挙行できますこと、たいへんうれしく思います。
さて、新聞などでも報道されていますが、今年1月に公表された全国の国立の教員養成大学?学部の教員就職率は、本学が第1位となりました。この数字は、昨年度卒業生のデータで、今年の1月に文部科学省より公表されたものです。本学はこれまでトップクラスの就職率を誇ってはきましたが、この20年間、第1位になることはありませんでした。今回、それが達成されたのです。皆さんの先輩たちが頑張った成果がこうした数字に表れているということです。今年卒業する皆さんの結果は次年度に公表されます。皆さんも、先輩たちに続いていただきたいと願っています。
そうは言っても、こうした数字は、皆さんが受験する地域の教員採用者数や臨時採用の数など、様々な事情に左右されます。ここにいる皆さんも、その多くが、教壇に立つことになると思いますが、その一人一人が、受け持つ子どもたちにとって良い先生になるということが大切なのです。就職率第1位ということについては、もちろん皆さんとともに大いに喜びたいと思いますが、併せて皆さん自身が良い先生になるということを強く願っています。
では、良い先生とはどんな教師のことでしょうか。皆さんは、この4年間に、授業の中でも何度か耳にしていると思いますが、ウィリアム?アーサー?ワードという人物は次のように述べています。「凡庸な教師はただしゃべる。よい教師は説明する。すぐれた教師は自らやってみせる。そして、偉大な教師は子どもの心に火をつける」 OECDから出されている小冊子「学びのコンパス2030」でも、エージェンシーという表現で、主体性の重要性が説かれていますので、子ども自身の中にやる気を引き起こすということはとても重要なことです。したがって、子どもの心に火をつけることのできる教師は、よい教師と言えそうです。
ただし、皆さんはそれぞれが違った個性を持っています。子どもたちも多様な個性を持っています。たとえば、熱心な教師ばかりがそろっていても、内向的な子どもは心が疲れてしまうというようなことが起こるかもしれません。そういう意味では、多様な教師集団が学校には必要かもしれません。皆さんが、それぞれの個性を発揮しながら、それぞれに良い教師になるということが大切だと思います。どうか、自分自身にとって良い教師とはどういうものなのか、皆さん自身がそれぞれに考えていただきたいと思います。
これからの学校教育は、さらに大きく変化していくのではないかと私は考えています。私自身が小中学生の頃は、教科書に書かれていることをしっかりと覚えていて、試験のときはそれを解答用紙に再現できることが学力と言われていたように思います。しかし、最近では、問題を発見することや、それを解決すること、そのために仲間と一緒に議論すること、さらには意欲や主体性などが、学力の中心に位置づけられ始めているように思います。
もちろん、そうした学力を高めていくためには、基礎となる知識を学び蓄える必要もあるわけですが、そうした知識獲得の学びも、体験を中心にしたものになり始めているように感じます。
例えば、雪国の生活を学ぼうとする場合、写真や動画、文字情報などさまざまな資料を使って学べますが、しかし、雪国に行って生活してみるという体験に勝るものはないでしょう。
学生時代、私は京都に住んでいましたが、3月ごろ友人たちと外で待ち合わせをした際に、春を感じさせるような風が吹いてきました。私は思わず、「暖かい風」と口にしました。友人たちから、「なぜこの風が暖かいんだ。冷たいじゃないか」と突っ込まれましたが、仙台出身の友人は、「わかるよ」と共感してくれました。この地で四年間過ごした皆さんにも理解していただけるのではないかと思います。
私たちは、自らの体験をとおしてさまざまなことを日常生活レベルで理解しています。その理解を基にして、新たに学んだことを解釈し、生きた知識として自家薬籠中のものとしていきます。
皆さんは、この4年間で、教育に関することをたくさん学びました。本学では、他大学と比べても優れた実践的な教育を行っていますから、学校現場ですぐに活躍できる基礎力はすでに身に付いているはずです。しかし、4年間の学びでは、実際の現場でのすべての事柄に対処できるとは言えません。皆さんは、これから、教師という立場で実体験をとおして学びを深めていかなければなりません。たくさんのことを体験して、経験化し、それを生きた知識として教師という職務の遂行に生かしてください。
けれども、すべてのことを体験するということは不可能です。また、体験したときにはもうすでに遅いというようなつらい体験もあるかもしれません。そうしたことがらについては、たとえば、小説とか、映画とか、テレビドラマとかをとおして、疑似的に体験してみるということもよいでしょう。そうした媒体からは、人生をどう生きるかというようなことのヒントが学べると思います。
多くの皆さんが教師になるという前提でお話をしましたが、教師にならない人もいるかと思います。あるいは、これからの長い人生の中で、職業を変える、あるいは、変えざるをえないというようなことも起こるかもしれません。そうした場合でも、皆さんの4年間の学びは決して無駄にはならないと思っています。教育についての学びは、ひっきょう、人生についての学びです。アイルランドの劇作家バーナード?ショーは、「人生とは自分を見つけることではない。人生とは自分を創ることである」と述べています。これまでの学びを基にして、それぞれが選んだ道で、未来の自分自身を創りあげてください。
竞彩足球app下载は、明日から皆さんの母校になります。皆さんには、この大学で学んだことを誇りとしていただきたい。そして、後輩たちの人生のモデルとなるように活躍していただきたいと思います。それは、なにも難しいことではありません。皆さん自身がそれぞれの目標に向かって努力する姿が、そのままモデルとなることでしょう。
最後になりましたが、式典の縮小によってご参加いただけなかったご来賓?保護者の皆様にはお詫び申し上げ、卒業生の皆さんのますますのご健勝とご活躍を心より祈念し、告辞といたします。
竞彩足球app下载４年３月１８日
国立大学法人 竞彩足球app下载長
林 泰成
このページは竞彩足球app下载／広報課が管理しています。（最終更新：2022年03月28日）
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