早川 裕隆/Hayakawa Hirotaka

修士（教育学）

＜専門＞
道徳教育論?道徳科指導法

＜研究内容及び指導内容、その他＞
 あなたは、効果的な「特別の教科　道徳」(以下、道徳科)の授業が展開できますか?
 道徳科は、これまでみられた「特定の価値観 を押しつけたり、主体性を持たず言われるままに行動するよう指導する」授業から、「考える」「議論する」授業への質的転換が求められています。そのため、これまでの「道徳の時間」に見られがちだった、「主題やねらいの設定が不十分な単なる生活経験の話し合いや読み物の登場人物の心情の読み取りのみに偏った形式的な指導」は明確に否定されています。しかし、道徳科の指導や効果等に不安や疑問を抱えている教師や学生が多いのも事実です。

 私は今まで、「質の高い多様な指導方法」の一つとして注目されている役割演技の効果やそのあり方、役割演技を用いる教師の授業力の向上等に関する実践的、実証的な研究を中心に取り組んできました。役割演技は、演劇のように、単に決められた台詞を上手に表現することではありません。即興的に演じることで、今まで知っていると思っていたことは、知っている「つもり」にすぎなかった現実に直面し、そこから生起する自己の新たな役割に対する主体的な問いを体験的?相互的に探究する過程を通して、自己（人間として）の生き方に関する考えを深め、道徳的価値の意味や意義を実感的に理解する「納得解」が生起します。役割演技による道徳授業には、このような「実感的」理解をもたらす効果があり、「道徳的諸価値の理解」と「生き方についての考え」が主体的?融合的に深まります。そこに生じる学習構造の主体的変容は、例えば、いじめ問題への対応の充実の基盤等にもなるものと考えます。そして、その実現の探究は同時に、教師や学校がいかに変容しうるかとの問いでもあります。役割演技に限らず、道徳授業を要とした学習構造の主体的変容による拡充を中心に、持続可能な教育の形成を担う実践力の構築を、皆さんと共に探究したいと考えています。